多才な音楽家である佐藤俊介は、バロック‧ヴァイオリンとモダン‧ヴァイオリンを弾きこなし、ソリストとしてもコンサート‧マスターとしても第一線で活躍している。さらに指揮者として、器楽アンサンブルおよび声楽アンサンブルと舞台を共にしている。
あらゆる時代のピリオド奏法が、佐藤をインスパイアする。彼にとって過去の演奏習慣にかんする知識は、音楽を現在によみがえらせる上で不可欠である。彼は、とりわけ19世紀の演奏実践をめぐる最先端の研究に通じ、この分野をテーマに講義やワークショップもおこなっている。
10月15日、最新アルバム「ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ全集」がとうとうリリース!去年12月から今年3月にかけて、ピアニストのスーアン・チャイとオランダのスキーダムで録音しました。何度弾いてもこの斬新で大胆なソナタ集に心を打たれる私たちですが、このCD録音が皆さまのベートーヴェンへの新たな驚き・感動・発見に繋がる事を心より願っています。
CDと共に「クロイツェル・ソナタ」の動画もYouTubeにリリースする予定です。このCD&動画のダブル・リリースを、どうぞお楽しみにお待ちください!
佐藤にとって音楽は、共感、文脈、ニュアンス、優れたプレゼンテーションが必要とされるコミュニケーションである。音楽は、演奏者と聞き手、双方の心に響かなければならない。大バッハの息子カール‧フィリップ‧エマヌエルは、1753年に「まず音楽家本人が感動していなければ、他者の心を動かすことはできない」と書いた。この言葉は、今日もなお核心を突いている。
ニコラウス‧アーノンクールのモットーは「美は災難と隣り合わせにある」だった。コンサートではリスクを冒す必要があるのだ。それによって生まれうる美には、何かを試みるさいに起こりうるどんな“災難”にも見合う価値がある。
日本語と英語に囲まれて育ち、これまでフランス、ドイツ、オランダで暮らし‧学んできた佐藤は、五つの言語を話す。彼は言語と言語学を愛し、テクストや歌手たちと向き合うことに情熱を傾けている。“話される言葉”への強い関心は、歴史的発音や劇的雄弁術を追究する(長い)道程を佐藤に歩ませてもいる。
佐藤は、音楽と他のパフォーミング‧アーツの融合にも進んで取り組んでいる。音楽が本来もつ可能性をさまざまに広げ‧探究し、それを観客と分かち合うことができるからだ。これまで、J.S. バッハの音楽に基づくオペラの創作に携わり、児童劇場や演出家たちやダンサーたちとコラボレーションを展開してきた。佐藤は、既存の楽曲のアレンジや楽器編成の書き換えにも大きな喜びを見出し、卓越した手腕を発揮している。
佐藤は、周囲を感化するコンサート‧マスターにして教師である。彼が思うに、この二つの役目が負う責務はよく似ている——美しい音楽が何をもたらすのかを示すこと、寛容で誠実であること、励まし、忍耐強く向き合うこと、そして人びとに扉を開き、彼らが自らの意志でその扉をくぐるよう促すこと。